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活発化した梅雨前線の影響で7月10日、福岡、佐賀、大分の3県で線状降水帯が発生するなど九州北部を中心に非常に激しい雨となった。各地で土砂崩れや河川の氾濫が起き、福岡、佐賀両県では土砂崩れや車の水没などで4人が死亡し、1人が心肺停止になった。他に3人の安否不明者の情報があり、捜索が続いた。気象庁は福岡、大分両県に10日朝、大雨特別警報を発表したが、午後5時半、警報に切り替えた。引き続き土砂災害などに厳重な警戒を呼びかけている。
梅雨の時期だけに西日本での大雨は例年通りだが、今回なぜ九州北部に集中しているのか。
九州では、梅雨明けが近づくこの時期に大雨が発生しやすい傾向にあり、平成29年には福岡、大分両県で40人が死亡、2人が行方不明となった九州北部豪雨が発生。令和2年7月豪雨でも多くの犠牲者が出るなど甚大な被害となった。
梅雨明けの時期の傾向について、京都大防災研究所の竹見哲也教授(気象学)は、太平洋高気圧の勢力が強まり、高気圧周辺の暖かく湿った空気が梅雨前線に向かって流れ込みやすくなると説明。さらに南西からの水蒸気が流れ込む位置にある九州は「線状降水帯のような大雨災害が全国的に見ると多い」という。
日本気象協会の高森泰人気象予報士は、今回の大雨の要因として「長期間停滞する梅雨前線に雨雲のもととなる大量の水蒸気が一気に流れ込んだ」と強調。太平洋高気圧の縁を回りこんだ暖かく湿った空気にインド方面から吹き込んでくる水蒸気の流れが九州西側でぶつかり、九州地方に大量の水蒸気が流入し続けたとの見方を示す。
このような状況は積乱雲をつくり出しやすく、次々と発生した積乱雲は風に流されて線状に連なり、線状降水帯が出現。同じ地域に大量の雨を降らせる結果となった。
また、近年の海面水温の高温も多量の水蒸気の一因になったとみる。今年は台湾沖の海面水温が例年よりも1度ほど高いといい、ペルー沖の海面水温が下がるラニーニャ現象の名残で、西太平洋の海面水温が上昇していることが影響したとされる。
高森氏は今後も引き続き梅雨前線が停滞するとみており、「雨が一度やんだ後も再び大雨が降る可能性がある。同様の気圧配置による大雨災害は全国どこで起きてもおかしくない。こまめに情報をチェックしてほしい」と注意を呼び掛けている。